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自閉症について調べていると、「高機能自閉症」という言葉を目にします。

「高機能自閉症」という言葉を聞いたことはあるけど、診断を受けた人は周りにいないし、なんなんだろう?と思っている方も多いかと思います。

ザックリ言うと、高機能自閉症は、知的発達の遅れを伴わない障害のことです。

そう聞くとアスペルガー症候群と何が違うの?と疑問が湧いてくるかと思いますが、アスペルガー症候群は知的発達や言語発達の遅れがあまりありません。一方、高機能自閉症は知的発達は見られませんが、言語発達に遅れが生じてきます。

名前で誤解されやすいですが、「高機能」とは「知的発達の明らかな遅れがない」ということを意味しており、「平均より高い知的能力がある」という意味ではありません。

ASD(自閉スペクトラム症)と比較すると、知的発達の遅れがない分、本人も周りも障害があることに気づきにくく、診断を受けずにそのまま大人になるケースが多くあります。適切な支援を受けられないことで、高機能自閉症により起きる困りごとや生きづらさを感じ、二次障害が引き起こされることもあります。
今回は高機能自閉症の特徴や困りごと、接し方について解説します。
※高機能自閉症は、正式な診断名ではありません。実際に医療機関などで診療を受ける場合などは、「ASD(自閉スペクトラム症)」と診断されることが多いですが、行政や教育の場で使用されてきた通称であることから、この記事では高機能自閉症として取り上げます。

自閉症     高機能自閉症  アスペルガー症候群
言語発達××
知的発達×

文部科学省による定義

高機能自閉症とは、3歳位までに現れ、①他人との社会的関係の形成の困難さ②言葉の発達の遅れ③興味や関心が狭く特定のものにこだわることを特徴とする行動の障害である自閉症のうち、知的発達の遅れを伴わないものをいう。また、中枢神経系に何らかの要因による機能不全があると推定される。
引用 学習障害(LD)、注意欠陥/多動性障害(ADHD)及び高機能自閉症について:文部科学省

高機能自閉症の特徴

高機能自閉症は、対人関係がうまくいかなかったり、限定された物事へのこだわりが強く表出したりするという特徴があります。言語の発達に遅れが見られますが、知能の発達に遅れは見られません。

〈子どもの場合〉

子どもの場合、特に言語能力の発達の遅れが見られるため、社会性や対人関係により強い困難を感じやすい場合があります。

  •  言語能力の発達の遅れ
    2歳までに単語を習得し、3歳までにコミュニケーション的な語句を用いることができていない場合、言語発達に遅れがあると言われています。高機能自閉症の子どもの場合、年齢に応じた言語やコミュニケーション能力の獲得に困難を感じる場合があります。
    ただし、高機能自閉症の子どもの場合、話し言葉の発達が遅れていても、発達過程で豊富な語彙が扱えるようになることが多く、成長とともに音程・抑揚・速さ・アクセントなども問題なく発話できるようになります。
  • 社会性と対人関係の障害
    言語能力の発達の遅れも影響していますが、もともとASDの特性として、①曖昧なコミュニケーションを取ることが難しいこと ②相手の気持ちを理解することが難しいこと ③場の暗黙の空気を読むことが難しいことなどが挙げられます。
    特に子どもの場合、園生活や学校生活において、自分の思ったままに発言して周囲の人を傷つけてしまったり、集団内で共有されている暗黙の共通ルールや慣習を守れないことで自己中心的な人と捉えられたりして、周囲とトラブルになることが多くみられます。
  •  限定的な反復行動
    ASDの特性として、一度興味を持ったものに対しては、過剰といえるほど熱中する傾向があります。また、自分独自の行動ルールへのこだわりが強く、その予定や手順を急に変えられることに強い拒否反応を示すこともあります。特定の領域に関しての知識や高い集中力がうまく働くこともありますが、興味がない領域に関してはすぐに忘れてしまったり、集中しすぎるあまり物事をやめられなくなってしまったりすることがあります。また、自分独自の行動ルールが守れないような状況になると、癇癪(かんしゃく)やパニックを起こしてしまうことがあります。

〈大人の場合〉

大人の場合も子どもと同じような特徴が見られます。特に社会生活に困難を感じる場面が多いです。

  • 言語コミュニケーションの障害
    言語の遅れが成長とともに改善されても、状況に応じて適切に言葉を選んで使うことに困難が残る場合があります。また、自分の気持ちを言葉で伝えることや、他人の気持ち・言葉を理解することが苦手な方もいます。
    相手の言葉を文字通りに受け取ったり、表情や身振りなどの非言語的なメッセージの理解が苦手だったりすることで、働く時に困難を感じやすい傾向です。
  •  社会性と対人関係の障害
    社会性の障害は、高機能自閉症の代表的な特徴の一つです。相手の気持ちや状況を推測することや、他人との適切な距離感をつかむことが苦手な場合があります。
    人との交流を避けるほどコミュニケーションが苦手だと感じる人もいれば、初めて会う人に一方的に親しく話しかけて迷惑に感じられてしまう人もいます。

〈二次障害〉

二次障害とは、発達障害などの一次障害を起因として、周囲からの理解を得づらい環境で繰り返し注意されたり、不安な経験をしたりすることで自己肯定感が下がってしまい、他の障害を引き起こしてしまうことを指します。高機能自閉症の場合、知能発達に遅れが見られないことから、本人も周囲も「高機能自閉症である」ということに気づかない場合が多くあります。そのような状態では適切なサポートを受けることができず、二次障害が引き起こす環境に陥りやすいです。
高機能自閉症の二次障害として、うつ病・適応障害・不安障害などの「内在化障害」と、暴力・妄言や他者に対する敵意・攻撃性などの「外在化障害」が挙げられます。
 

  • 内在化障害
    発達障害の特性も含め、自分自身に対するいらだちや精神的な葛藤が自分に向けて表現される症状のことを「内在化障害」と呼びます。具体的には下記のような症状が挙げられます。・不安障害・抑うつ・強迫性障害・睡眠障害・対人恐怖・心身症・依存症・引きこもり など
    中でも抑うつ症状は、高機能自閉症を含め発達障害がある大人(18歳以上)に最も表れやすい二次障害と言われています。
  • 外在化障害
    自分自身に対するいらだちや精神的な葛藤が、他者に向けられる形で表出する症状のことを「外在化障害」と呼びます。具体的には下記のような症状が挙げられます。・暴力、暴言・家出・他者に対する敵意、攻撃性・反抗挑戦性障害・行為障害・感情不安定、自傷行為・非行などの反社会的行動
    特徴としては、大人になってから見られるだけでなく、小学校低学年など比較的幼いうちからこのような行動が繰り返し見られるケースもあります。
    これらの内在化と外在化の問題は、両方が密接に関わって表れることもあります。
    特に高機能自閉症の場合、二次障害により医療機関を受診し、高機能自閉症と診断されるケースも少なくありません。

診断基準

高機能自閉症という言葉は一般的によく使われていますが、精神医学における診断名ではありません。
高機能自閉症にあたる特徴・症状がある方は、診断基準上は「DSM-5」におけるASD(自閉スペクトラム症)に含まれます。

特徴的な困りごと

高機能自閉症のある子どもによく見られる困りごとを以下に列挙しますが、必ずしもすべての子どもに当てはまるわけではなく、一人ひとり特徴は異なります。
 

  • 人との関わりに関心がない、もしくは過剰に関心がある
    高機能自閉症の特徴として、社会性と対人関係の障害があります。視線が合わなかったり近づくと避けたり、人との関わりがあっても興味や感情を共有することが少ないといった特徴があります。
    反対に一方的すぎるコミュニケーションをとってしまい、双方向の対人関係をうまく築くことができない特徴もあります。
     
  • 同じやり方や状態にこだわる
    高機能自閉症の特徴に、限定的な反復行動に基づく困りごとがあります。例えば、毎日同じ道順をたどる、同じ服を着ることや同じ食べ物を食べることを要求する、ドアを何度も開け閉めするといった生活習慣や、ミニカーのタイヤを回してずっと遊んでいるといった遊び方があげられます。
     
  • 感覚(痛みや音、におい、光など)に無関心、もしくは過度に反応する
    高機能自閉症は、感覚に偏りがある場合があります。身体を触られることを極端に嫌がったり、赤ちゃんの泣き声など特定の音を嫌がりパニックを起こしたりすることがあります。
    また、食感や味覚に敏感で、特定の食べ物しか食べられず偏食になるというケースもあります。

接し方

高機能自閉症のある子どもに接する時は、工夫することで困りごとや生きづらさをやわらげることが期待できます。子どもの様子を見ていて気になる点があれば、専門機関に相談の上、接し方を工夫してみてください。
 

  • 簡単な言葉で、統一した言葉かけを行う
    曖昧な表現で伝えると高機能自閉症の子どもは混乱しやすくなります。簡単な言葉でゆっくりと話すことを心がけてみましょう。例えば「ちゃんと座って」ではなく「前を向いて座ろう」、「そこに置いて」ではなく「机の上に置いて」など、短い言葉で具体的に伝えることがポイントです。また言い方が変わると同じことであるとは理解しづらいため、繰り返し同じことを伝えたい時には伝え方を統一しましょう。
  •  落ち着ける環境を用意する
    苦手な音が聞こえる場所や、たくさんの物が見える環境では、子どもに刺激を与えてしまいます。静かなスペースを用意して落ち着けるようにしたり、壁や机の上をスッキリさせる・物が置かれている場所にはカーテンをつけるなどして気が散らないようにしたりして、子どもが安心して過ごすことができる環境を用意しましょう。
  • 興味の幅が広がるような工夫をする
    高機能自閉症の特徴として、同じことを繰り返すことが挙げられますが、無理矢理に別のことに興味を持たせる必要はありません。
    いつもの遊びをしてから他の遊びにも誘ってみることで、興味の幅が広がるきっかけにつながるかもしれません。例えば、いつもミニカーを並べて遊んでばかりという場合には、車が描かれた絵本を一緒に見たり、積み木や折紙・段ボールなどを使って車を作ってみたりと、いま興味があるものから少しずつ他のことにも興味を持たせることも有効な手段です。
     
  • スケジュールや手順を視覚的に伝える
    高機能自閉症の子どもは、想像力や応用力を使うこと、物事を直感的に理解することが苦手なケースが多いです。また、変化に不安を感じやすく、パニックにつながることもあります。
    そのため、先の見通しや、自分がやることを目に見える形で共有することで安心感を与えることができます。「学校に行く前に、顔を洗って、着替えて、ご飯を7時半までに食べて……」と言葉で伝えてもイメージがしづらいため、文字や絵など視覚的に認識できる方法で伝えましょう。また、「いつ始まるのか」「いつ終わるのか」を感じ取ることが苦手で、強いストレスを感じる場合があります。
    その際も砂時計やスマホのアラーム、時計の文字盤などを使って、いつ今の状況が終わるのか、いつから次の行動を始めればいいのかを把握しやすいようにしましょう。

【引用】

LITALICO

https://life.litalico.jp/hattatsu/mailmag/149/

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